はじめに
高齢の親とのコミュニケーションは、多くの子世代にとって日々の悩みの一つです。特に、離れて暮らしている場合や、親が年を重ねるにつれて、健康や生活に対する不安が増す中で、どのように連絡を取り合い、親との関係を良好に保つかが課題となります。
厚生労働省の2020年発表の調査によれば、65歳以上の高齢者の約30%が一人暮らしをしており、その多くが孤独や不安を感じているとの報告があります。この孤独感や不安感を、日常のコミュニケーションの中でどのように解消できるかが重要なポイントとなるかと思います。
また、NHKで放映の特集番組「老後の不安と親子のコミュニケーション」では、年齢を重ねた親が感じる不安と、その不安を軽減するためのコミュニケーションが特集されました。親が子供に対してどのようなサポートを求めているか、また、どのような話し合いが有効であるかが議論されています。
本記事では、そうした調査や番組を参考に、高齢の親とのコミュニケーションを円滑にし、親子関係の悩みを解消するための具体的な方法について筆者なりにまとめた内容をお伝えします。そして、筆者自身が試した親が感じる不安やストレスを軽減するための方法をご紹介します。
高齢の親とのコミュニケーションを円滑にする方法
親の話をじっくり聞く姿勢を持つ
親とのコミュニケーションで最も大切なのは、相手の話をじっくり聞く姿勢を持つことです。厚生労働省の「高齢者の心理的問題に関する調査」によると、高齢者の多くが「話を聞いてもらうこと」で安心感を得るとされています。
NHKの番組では、親が日常的に抱える小さな不安を家族と話すことが精神的な安定につながるという事例が紹介されています。あるインタビューでは、親が子供に対して自分の健康状態や日常の悩みを共有することで、孤立感が軽減され、より積極的な生活を送れるようになったという例が挙げられました。
親との意見の衝突を避けるための工夫
上記の番組や報告を知って、親サイドの気持ちに寄り添うべく親の気持ちを聞こうとしても、うまくいかないことが多いのです。筆者もそうですが、子世代が話を聞こうとしても親と意見が衝突してしまうことが多く、なかなか会話がスムーズにいかないのです。
親世代と子世代では、価値観や意見が異なることが多いため、意見の衝突が起こりがちです。たとえば、親が自分の健康状態について無理をしようとしている時に、子どもが心配して止めることがあります。このようなケースについては、厚生労働省の「高齢者の生活状況」【厚生労働省, 2021】で、親が自分の意思を尊重されたいと感じていることが強調されています。
NHKでも、健康に関する話題が親子間で意見の衝突を招くことが多いことが報じられています。
それでは、どうすれば衝突を避けることができるのか?それは、親の意見を尊重しながら、冷静に話し合うこと、です。例えば、健康診断の重要性を説明する際に、親の意見を無視するのではなく、専門家のアドバイスを取り入れる形で話し合いを進めると、親も納得しやすくなります。
すぐに喧嘩になりがちだった筆者親子を振り返りますと、親は子供に自分の不安や悩みを話したいと思っているのですが、そのことをうまく子に伝えられない、というジレンマをもっていたことに気づきました。気づいたときに申し訳なかったなという気持ちになり、それ以来、できるだけ親に先に話してもらうことで、喧嘩を減らすことにつながりました。
親の感情を汲み取るコミュニケーション術
親が感じている感情や気持ちをしっかりと理解したいと思う世代、伝えたいと思う親世代。ともに思いをもっていますが、高齢の親は将来の不安や体力の低下に対する恐れを抱えていることが多く、伝えかたに迷っているうちに、結局伝えることをあきらめてしまうこともあるようです。
そのため、親のそのジレンマにも似た感情を汲み取ろうとする姿勢も含めて、子世代ができることを試して頂きたいなと思います。
親が心に封じ込めてしまった気持ちをそのままにしておくと、高齢の親は自ら孤立してしまう道へと突き進んでしまうからなのです。
逆に言うと、子から譲歩して親の気持ちを話してもらうよう促すことで、親の孤独感を軽減できるのです。厚生労働省の「高齢者の孤独感と不安」【厚生労働省, 2021】では、家族との関係が孤独感を軽減する要因として挙げられています。
親子関係の悩みを解消するためのヒント
親子関係の悩みとその解決策
親子関係の悩みのひとつに、「親が過干渉である」「親が自分の生活に過度に干渉してくる」といったケースがあります。この種の悩みは、親の愛情がちょっと多すぎてしまうことからきていることが多く、無理に拒絶するのではなく、適切な距離感を保つことで解消できることが多いです。
具体的な解決策としては、親に対して自分の生活や考えをわかりやすく丁寧に説明し、親にも自分の考えを尊重してもらうようにお願いすることが有効です。また、NHKの特集では、親が子供に対して過干渉になる原因として、親自身の孤独感が挙げられ、親自身の活動を増やすことで解消されるケースが紹介されています【NHK, 2021】。
親との距離感を保ちながらも関係を深める方法
親との適切な距離感を保ちながら、気持ちは離れずにいる状態とはどういう関係でしょうか?
親が子供の生活に過度に干渉することがなく、自分の生活を尊重してくれる関係を築く方法として、定期的に連絡を取り合ったり、会う時間をつくることで、距離を保ちつつ気持ちを通わせることが可能です。
また、親と共有できる趣味や一緒に活動する時間をもつことで、お互いに心地よい距離感を保ちながら心地よく過ごすことができることもあります。
親との関係における日頃の心がけ
親と子でちょうど良い関係を築くには、表立ってなにかをするというよりも、日頃の心がけと行動が、より効果があるなと感じています。気持ちをLINEスタンプで伝えてみたり、必要そうだなと気づいたものをさりげなく渡しに行ったり等、ちょっとした思いやりを親に対してしてみる等です。地味といえば地味ですが…そのためにも、定期的に電話したり連絡とりあうことで、親の不安や気持ちを察することができますよ。
因みにですが、厚生労働省のデータ【厚生労働省, 2020】によれば、定期的に子供と連絡を取っている高齢者は、孤独感が少なく、精神的にも安定していることが確認されています。こうした日常的な小さな努力が、親子間の信頼関係を強化するための基盤となります。
親子の信頼関係を深めるコミュニケーション術
親とちょうど良い関係を築くための具体的な方法
親とちょうどよい関係を築くためには、共通の話題を見つけ、日常的なコミュニケーションをとっていることが重要です。例えば、親が興味を持っている趣味や活動について一緒に話し合ったり、定期的に家族イベントを開催することも効果的です。
NHKの特集「シニア世代のための趣味とコミュニケーション」【NHK, 2021】では、親と一緒に趣味や活動を共有することが親の心身の健康にプラスになると報じられています。特に、趣味を通じて親が楽しみを見出し、子供と共通の話題を持つことで親子のコミュニケーションが活発化し、親の生活の質が向上するという事例が紹介されました。
親との会話で気をつけるべきこと
親との会話では、相手を傷つけないように気をつけることが重要です。特に、高齢の親は敏感になりやすく、不用意な言葉が感情を逆撫ですることがあります。言葉を発する前に、親にとってつらい言葉じゃないかな?とちょっと思いをはせてみたり、思いやりを持った言い回しを心がけて見て頂けたらと思います。
NHKのインタビュー【NHK, 2022】でも、親が自分の将来に対して不安を抱いている中で、子供が意図せずその不安を刺激するような発言をしてしまうことがよくあると指摘されました。たとえば、「もう年だから無理しないで」といった言葉が、親にとっては自分が役に立たなくなったと感じさせる可能性があります。こうした無意識の発言に注意し、ポジティブな言葉を心がけることが、親の心を安定させるためには大切です。
親子間の信頼を高める日常的な小さな努力
親と子であっても信頼関係は一度に築けるものではなく、日常的な小さな努力の積み重ねが大切だなと日々思っております。大げさな感謝ではなくてもよいので、小さな感謝の気持ちを伝えることや、定期的に連絡を取ることで、親が子を信じてくれるようになる一歩で、親子間の信頼を強化するための基本となります。
厚生労働省の「高齢者と家族との関係に関する調査」【厚生労働省, 2020】でも、子供が日常的に親に対して感謝や気遣いを示すことで、親の精神的健康に大きな効果をもたらすことが示されています。親が何か不安を感じている場合には、すぐに対応し、その不安を取り除くことで、親が安心して暮らせる環境を整えることができます。
そして、日々の連絡とあわせて、親の誕生日や記念日などの特別な日に、心のこもったメッセージやプレゼントを送ることで、親の生活に彩りを添えることができるはずです。こうした積み重ねが親子間の絆を強くしてゆく道のりなのだと思います。
まとめ
高齢の親とのコミュニケーションは、親の感情や不安に寄り添い、適切な距離感を保ちながら、信頼関係を深めることが重要です。特に、親が感じる不安や孤独感を軽減するためには、日常的なコミュニケーションやサポートが欠かせません。厚生労働省やNHKの調査や番組からもわかるように、親との連絡や対話を通じて、親子間の信頼を深めることが親の心の安定や生活の質向上に寄与します。
定期的な連絡や、親が感じるストレスに対して積極的にサポートを提供することで、親子関係を良好に保つことができます。また、親と一緒に趣味を楽しんだり、共通の活動を見つけることが、より強い絆を築くための効果的な方法です。親が安心して暮らせる環境を整え、心の安定をサポートすることで、親も子も心配や不安の沼から出て安心して歩むことができると信じています。