はじめに
前の記事では、親御さんの健康チェックと簡単な対策法をお伝えいたしました。
高齢の親の体力低下を防ぐ!シニア向け健康チェックと簡単な対策法
こちらの記事では、健康チェックの内容について、具体的に【行動パターン】を手掛かりに確認をする方法をお伝えしたいと思います。
カテゴリーごとに、実際の行動パターンをチェックリストを用いて把握してゆき、その結果を俯瞰してみることで、今の状況を目に見える形で確認することができます。今はまだ大丈夫と思っていてもこの先不安になるであろう心配事を先読みすることにつながります。
今現在のご年齢での親御さんの【健康状態の現在地】を知ることで、今そしてこの先、気を配るポイントを明確にすることが目的です。
より早い段階で気づくこと、これが不安要素を減らす第一段階です。
チェックリスト
こちらで用いるチェックリストは、厚生労働省や政府広報オンラインで公表されている指標に基づいて、筆者がより詳細な事例をもとに作成したものです。
親御さんとご一緒に、会話のなかで確認する、あるいは親御さんの行動パターンをそれとなく確認する、などの方法でぜひ親子でチェックしてみてください。
チェック方法は、単純に二択の有れば〇、無ければ無し✖でもよいですし、三択で有る〇、無し✖、どちらともいえない△でも良いです。まずは把握することが第一段階です。最後までチェックしてみて、〇△×の数字がそれぞれいくつあるか、そして〇の数が多いのはどのカテゴリーなのか、可視化して確認してみましょう。
外出に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
週に1回以上、外出していますか? | □ | □ | □ |
1人で外出していますか? | □ | □ | □ |
半年前と比べて外出の回数が減っていますか? | □ | □ | □ |
自動車の運転免許は返納しましたか? | □ | □ | □ |
交友に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
友人と定期的に会っていますか? | □ | □ | □ |
家族と顔を合わせていますか? | □ | □ | □ |
家族や友人と相談事をしたり、相談を受けていますか? | □ | □ | □ |
買物に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
日用品の買い物を自分でしていますか? | □ | □ | □ |
重い荷物を持って買い物ができますか? | □ | □ | □ |
買い物リストを作成し、忘れずに買い物を完了できますか? | □ | □ | □ |
ネットや電話で日用品を注文することはできますか? | □ | □ | □ |
行動に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
この半年間、転倒せずに過ごせましたか? | □ | □ | □ |
ベッドや布団から起き上がる際、辛さを感じますか? | □ | □ | □ |
15分以上続けて歩けていますか? | □ | □ | □ |
椅子に座った状態から、何もつかまらずに立ち上がれますか? | □ | □ | □ |
つまずきや転倒に対して強い不安を感じますか? | □ | □ | □ |
小さな段差に不安を覚えていますか? | □ | □ | □ |
テレビや人の話し声が聞き取りにくく、音量を上げたり、聞き返すことが多いですか? | □ | □ | □ |
視力が以前より悪くなったと感じていますか? | □ | □ | □ |
食事に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
食事中にむせることはありませんか? | □ | □ | □ |
食事中にお茶や水を飲んでいますか? | □ | □ | □ |
口の渇きが気になりますか? | □ | □ | □ |
睡眠に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
夜中にトイレに起きる回数が増えましたか? | □ | □ | □ |
起きた後も眠気を感じることが多いですか? | □ | □ | □ |
寝つきが悪くなっていますか? | □ | □ | □ |
会話に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
話している途中で内容を思い出せないことが増えましたか? | □ | □ | □ |
物忘れが多く、同じことを何度も聞かれていると言われますか? | □ | □ | □ |
人と話すのが面倒に感じたり、話を途中でやめたくなりますか? | □ | □ | □ |
人が自分を嫌っているのではないかと不安になることがありますか? | □ | □ | □ |
特に理由もなく疲れたように感じることが増えていますか? | □ | □ | □ |
身体に関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
この半年で体重が2〜3キロ以上減少しましたか? | □ | □ | □ |
最後に健康診断を受けたのはいつですか? | □ | □ | □ |
予約している病院に、忘れず通えていますか? | □ | □ | □ |
処方された薬を飲み忘れることがありますか? | □ | □ | □ |
趣味・楽しみに関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
以前楽しんでいた作業や趣味を、今も楽しめていますか? | □ | □ | □ |
以前はできていたことが、今ではおっくうに感じますか? | □ | □ | □ |
身のまわりに関するチェックリスト
質問項目 | 〇 | △ | × |
---|---|---|---|
朝起きてから、パジャマから着替えていますか? | □ | □ | □ |
着替えるのが面倒に感じることはありませんか? | □ | □ | □ |
入浴することが面倒に感じていますか? | □ | □ | □ |
定期的に洗濯をしていますか? | □ | □ | □ |
玄関に何足の靴がありますか? | □ | □ | □ |
ガスや電気を切り忘れたことがありますか? | □ | □ | □ |
ゴミ出しを定期的にしており、溜めることはありませんか? | □ | □ | □ |
半年以上あけていない戸棚やタンスはありますか? | □ | □ | □ |
片付けをしようと思いながら、人から言われるとおっくうになったことがありますか? | □ | □ | □ |
冷蔵庫に賞味期限切れの食品がありますか? | □ | □ | □ |
財布にいくら入っているか把握していますか? | □ | □ | □ |
毎月どれくらいのお金を何に使っているか把握していますか? | □ | □ | □ |
通帳や印鑑の場所を覚えていますか? | □ | □ | □ |
最後に銀行に行ったのはいつですか? | □ | □ | □ |
家族と世帯の資産について話し合ったことがありますか? | □ | □ | □ |
家のどこかに緊急連絡先を貼っていますか? | □ | □ | □ |
緊急連絡先を見ずに言えたり、電話できますか? | □ | □ | □ |
子どもの声を認識できますか? | □ | □ | □ |
電話で話した際、子どもの声を覚えていますか? | □ | □ | □ |
子どもとどのくらいの頻度で会っていますか? | □ | □ | □ |
子どもに言えない、または言いたくないことがありますか? | □ | □ | □ |
チェックリストのあとに
上記のチェックリストで、おおまかにでも良いのでひと通りチェックを終えたら振り返ってみましょう。
振り返りのポイント
まず俯瞰してみて、どの項目に△や×印が多いか?
つぎに、△や×印が多い項目について、今度はなぜなのか、それぞれの要因を思い浮かべてみてください。
親御さんと同居されている場合には、毎日会っているから気づけていると思いたいところですが、実はちょっとした変化に気づきにくいという面もあります。
親御さんと離れて暮らしている場合には、離れて暮らす子に心配をかけまいとして親から不安をなかなか吐き出してくれません。そして、子がたまに帰省した際には、気持ちの高揚も相まってつい元気な振りをしてしまうことが往々にしてあります。
親に対して❝体力が衰えているだろう❞というフィルターでみることはできれば避けたいですが、かといって、❝いつまでも若い頃のような元気❞なままでいるということは決してないのは事実です。
年齢を重ねてゆけば誰しも体力は低下し、いつ体調を崩してしまってもおかしくない状況にあるのです。ごくごく自然なことですし、そのことを踏まえて、子が親を見守ってゆくことが重要となると考えます。同居していても、離れていても、です。
行動を確認するポイント
では、チェックリストを終えて気づいたことについて、実際に親の行動を見て確認するにはどのようにすればよいか?
それは、一緒に旅行に行くことです。丸一日、しっかりと行動をともにできる旅行をおすすめしています。旅行では、移動での階段の昇り降り、歩く速度、食事の量、睡眠の状態、着替えのスムーズさ、身の回りの整頓状態、歯磨き・トイレ・入浴、といった一連の行動から気づけるポイントがいくつもあるからです。
一泊二日であれば一日目は気分の高揚や気が張っていることから元気に振る舞っている親であっても、二日目も終盤に近付くと徐々に日常の様相が垣間見られる場面があるかと思います。
老いも若きも疲れてくると、普段の生活が現れてくるものです。親の行動であれ?と気づく点があった場合、すぐに直接的な表現で指摘するのではなく、「(例)ちょっと疲れちゃった?休む?」と問いかけながら、その後は間をおいて、聞けるタイミングで「(例)〇〇するのがもし面倒だったら私が●●しよっか?私●●するの好きだよ?」といった提案をするなかで、親御さんが無理せず生活できるスタイルを一緒にみつけていけると良いのかなと思います。
「あらそう?じゃあお願いしようかしら」という親の返答がもしあった場合には、その後は親のほうから自ら子に対して打ち明けやすい環境に近づいていっている、と感じられるはずです。心は元気であっても身体は必ずしもそうとは限らないところが、老いについて親子で話すことがタブー化してしまいがちな難しいところだと常々感じています。
難しい話題と避けるのではなく、早く気づくことで身体的な老いの速度を緩めて気持ちも楽に元気になってもらえることをお伝えしたいのです。そのことで、子も親も安心な生活を送って頂けると信じています。